2026/09/29 コラム
給与差押えを止める方法とは?弁護士がわかりやすく解説
「給料が差し押さえられた」「督促状の次は差押えだと言われた」——このようなご相談は、債務整理の現場で最も緊急性の高いご相談のひとつです。結論から言えば、給与差押えを止める方法は、任意整理・個人再生・自己破産のいずれかの手続きを速やかに進めることに尽き、弁護士に依頼した、受任通知を送っただけでは差押え自体は止まりません。本コラムでは、差押えの範囲や流れ、手続きごとの給与差押えを止める方法の違いを解説します。
いくらまで差し押さえられるのか
民事執行法152条1項2号は、給料などの債権について「支払期に受けるべき給付の4分の3」を差押禁止としています。つまり原則として、手取り額の4分の1までしか差し押さえることができません。
ただし、手取り額が44万円を超える場合は話が変わります。民事執行法施行令2条により差押禁止額は一律33万円とされているため、手取りが44万円を超える部分は全額が差押えの対象になり得ます。たとえば手取り50万円であれば、17万円が差押えの対象です。
なお、養育費や婚姻費用が請求債権である場合は、民事執行法152条3項により差押禁止の割合が2分の1に縮小され、より広い範囲が差し押さえられる点にも注意が必要です。
差押えから給与天引きまでの流れ
債権者が裁判所に差押命令を申し立てると、裁判所は民事執行法145条に基づき、勤務先(第三債務者)と債務者本人の双方に差押命令を送達します。差押えの効力は、勤務先への送達時点で生じます(同条5項)。
そのため、勤務先に差押命令が届いた後、最初に到来する給料日から、対象額が控除されることになります。さらに、民事執行法155条により、送達から1週間が経過すると、債権者は差し押さえた給与を直接取り立てることができるようになります。
給与差押えを止める方法は手続きごとに異なる
任意整理で給与差押えを止める方法:当然には止まらない
任意整理は裁判所を通さない私的な交渉手続きです。そのため、弁護士が受任通知を送っても、既に開始されている差押えを当然に止める効力はありません。差押えを止めるには、債権者と交渉し、差押命令を取り下げてもらう必要があります。
個人再生で止める方法:開始決定で「中止」、認可確定で「失効」
民事再生法39条1項により、個人再生の再生手続開始の決定があると、既にされている強制執行は中止します。中止により勤務先から債権者への支払いは止まりますが、差押え自体が消えるわけではなく、控除額は勤務先が保管・供託する扱いになります。その後、再生計画認可の決定が確定すると、民事再生法184条により中止していた差押えは効力を失います。
自己破産で止める方法:管財事件は開始決定で失効、同時廃止は中止を経て失効
自己破産手続開始決定で管財事件となった場合は、破産法42条2項により、破産債権に基づく差押えは直ちに効力を失います。一方、同時廃止事件の場合は即時失効の規定が適用されないため、破産法249条により、まず開始決定で差押えが中止し、免責許可決定が確定した時点で正式に効力を失うという扱いになります。
「相談しただけ」「申立て準備中」では止められない
差押命令に対しては執行抗告(民事執行法145条6項)という不服申立て制度がありますが、これは差押命令の発付手続そのものに違法・不備がある場合の制度です。「債務整理を依頼した」「申立ての準備をしている」という事情だけでは執行抗告の理由にはならず、棄却されます。給与差押えを法的に止めるには、個人再生や自己破産の申立てを行い、裁判所から手続開始決定などを得たうえで、執行裁判所に提出する必要があります。
会社に知られてしまうか
給与が既に差し押さえられている場合、裁判所からの差押命令送達により、勤務先はすでに差押えの事実を把握しています。そのうえで差押えを止める手続きを進めると、任意整理では取下げ通知、個人再生・自己破産では中止・失効の決定書が勤務先に送達されるため、債務整理をしていること自体を会社に完全に隠し通すことは困難です。
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